マニ車には、真言を唱えながら手で回すものが代表的である。手で回す小型のマニ車を「マニ・ラコー」という。チベットの老人たちは時間が許す限り、この「マニ・ラコー」を回す習慣がある。僧院本堂にあるマニ車は、「マニ・ラカン」といい、高さ2~3メートル、直径3~4メートルの大きなものまである。また、マニ車には自然の力を利用して回転させるものもある。川や滝の水力で回るマニ車(「マニ・チュコー」)、灯明の熱で回る紙製のマニ車、自然の風で回るマニ車などがある。
マニ車の経文
マニ車に巻かれている経文「スン」の中身は様々であるが、大多数は真言「オムマニペメフム(観音の真言)」である。「オムマニペメフム」が何千回、何万回と繰り返し書かれており、その分量はマニ車の大きさによって異なる。時には、「オムマニペメフム」の他、パドマサンバワ(蓮華生)、ジャムペーヤン(文殊菩薩)、ドルマ(タラ菩薩)などの真言もみられる。心身込めてマニ車を回せば、回した分量の真言を唱えたことと同じ功徳があると言われている。
マニ車は神聖なもの
チベット人は、マニ車に巻かれている経文「スン」だけを買ったり僧院から入手したりして、マニ車を作ることもある。この場合、マニ車の上下、表裏を絶対に間違わないように巻き上げることが大切である。経文を間違って巻くと回しても正しく真言を唱えたことにならず、間違って巻いた人には悪い業が生じ、それを知らずに使用した人には功徳が少なくなると考えられているからだ。マニ車は、「スン」を正しく巻いて、高僧に「ラプネ」(「入魂の儀式」)を受けて初めて使用可能となる神聖なものである。